昨年12月のエヘアに続き、ギリシャのミカエル・ジョルジオ・タナスが日本にやってくる。アゼルバイジャンのA・アガイエフ、イタリアのL・ブサ等、最も熾烈な階級で、優勝候補に挙げられるコテコテの現役強豪選手だ。世界のトップを現在進行形で走り続けるタナスは、日本にどのようなカルチャーショックを与えてくれるのだろうか。
タナス脅威の前拳
JKFan2010年12月号の超人解析で紹介された世界最強のひとり、タナスがいよいよ来日する。彼の特徴は「起こり」がなく突然飛んでくる刻み突きだ。その前拳でタナスは幾多の修羅場を潜り抜け、現在の地位を築いてきた。
タナスは、前拳の使い手としては世界一の名手と言っても過言ではないだろう。なぜ、前拳の名手として彼は今日の地位を築くに至ったのか。それは、やたらに刻み突きでポイントを取ることはせず、肝心な時に、確実に刻み突きでポイントを取り、鉄壁の防御で最少点を守りきることができる選手だからだろう。
たとえ1ポイントであっても、常に刻み突きが勝負の決まり手となるので、なおさら刻み突きの印象が強くなるのだ。タナスの戦闘スタイルを端的に表現すれば、「他の技を見せ技にして刻み突きでポイントを取り、最少点差のリードを守り切る」と言えるだろう。相手は刻み突きで来るのが分かっている。それでも刻み突きで勝負を決めることができるのだからその技の完成度は並ではない。
アガイエフやピーターセンが、技を駆使した「観て面白い」試合なのに対し、タナスの試合は、「地味でつまらない」試合と最初は映るのではないだろうか。
しかし、タナスには一発がある。カウンターの裏回し蹴りや、飛び後ろ回し蹴りなどだ。これをタナスはここぞのタイミングで放ち、一気に観客を魅了する。それに加え、正確無比な「左」があるのだ。
ボクシングには、「左は世界を制す」という言葉があるが、タナスはまさに、「世界を制す」前拳の持ち主ということになる。
タナスの刻み突きを見ると、ノーモーションで斜め下から飛んでくる。絶対的なスピードが他の選手に勝っているから世界最速なのではない。最速の理由は、ノーモーションで最短距離を通ることだろう。加えて、斜め下から突くことで相手の反応を遅らせている。これらが複合し、相乗効果を生み、結果的に世界最速と言われるまことになる。
タナス脅威の頭脳
過去の世界王者たちは口をそろえて言う。「空手は頭の良い方が勝つ」と。その点でもタナスは世界王者になれる素質を十分に持っているといえる。確かに、刻み突きだけでこれだけの成績を残すことはできない。そこに至るまでに、幾多の罠をコートに仕掛け、相手を落とし込んでから刻み突きで勝負を決めてきた。
その壱・ステップワーク
タナスは、試合開始と共にコートを回りながら、間合いを計るが、彼の特徴はステップが非常に細かいことだ。両足で細かいステップを踏むことで、足が宙に浮いている時間が少なくなり、突然の相手の攻撃にも反応でき、フェイントで体勢を崩すこともない。また、ステップも細かに踏むが、頭を振るときも最少限度に止めている。むやみにダッキングでかわすことはしていない。
そして、相手の間合いとみるや、即座にコート内を移動して間合いをリセットしてしまう。彼は突き蹴りの技よりも、むしろこの間合いの取り方が天才的にうまいので、確実に表彰台に上がっているのではないかと思う。
その弐・前足の蹴りで突き放す
タナスは、ガンガンとポイントを取りにいくタイプではない。僅か数ポイントを終了のブザーがなるまで守りきって勝つ、そんな戦法に徹している。その中で最も効果的と思われるものに、前足で中段を蹴り、相手を突き放すものがある。
試合も終盤に差し掛かると、相手はリードされたポイントを取り返そうと半ば強引に前に出てくるが、タナスが左右にかわしているうちに相手の足が揃い始め、相手の身体は左右の動きに反応しようとして、いつのまにか開いている。タナスはその時を狙って前足での前蹴りで相手を突き放す。足が揃っている相手選手はたまらずにバランスを崩し、このことで攻めのリズムが止められてしまう。
蹴りは、必ずしもポイントにならなくても、戦術としての幅が広がることを彼は教えてくれる。タナスは前拳でリードしたポイントを前足で守りきるというパターンで勝利の山を築いているといえるからだ。
来日前にタナスのすべてを紹介してしまっては興味を殺いでしまうので、タナスの技の紹介はこの辺りでやめておこう。後は、直接セミナーに足を運んで世界の技を体験してもらいたい。
今や、世界はどの国が強いかではなく、誰が強いかという時代になった。ギリシャという、世界では決してトップレベルではない国から彗星のように現れたスーパースターが、どのような内容の指導をしてくれるのか、大いに期待したい。
“ 世界最速” の技を持つ、現役世界王者がギリシャからやってくる。その技を世界が憧れる名指導者、前田利明、 村瀬一三生両氏が検証し参加者全員に直接指導。 そしてメジャースポーツのトップ選手を知り尽くしたメンタルトレーナーの高畑好秀氏がメンタルの面から空手 道競技を検証。 新しいスタイルの実技、指導、講義が一体となったアカデミックセミナーをぜひ体験してください。
- 日時
- 2月11日(土曜日)13〜17時/2月12日(日曜日)10〜15時
- 場所
- 中央区スポーツセンター サブアリーナ
- 主催
- 特定非営利活動法人和道教育武道振興会
- 後援
- 中央区、中央区教育委員会、中央区文化・国際交流振興協会
- 協賛
- ニチレイ、三井不動産、清水建設
- 主なセミナーの内容
- ■スピード・衝撃・バランスのための練習方法(テクニック、身体操作、戦術について)
■ハイスピード・衝撃的な突きと蹴りのテクニック
セミナー講師の予定 2月11日(土曜日) タナス×前田利明 2月12日(日曜日) タナス×村瀬一三生×高畑好秀 - 費用
- 1日のみのチケットは5,000円、2日間は8,000円
- お問合せ
- NPO 法人和道教育武道振興会 TEL:03-5524-5599
※出来るだけメールをご利用ください() - 振込先
- 特定非営利法人和道教育武道振興会
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